市場を転換することでシェアを伸ばした学習塾
市場を広げることで、従来のブランディングをより強力にすることができた成功事例です。
SITUATION ご依頼時の状況
中国地方で展開するC塾は、地元の一流高校への進学を目標とした高校受験特化型の塾でした。ところが少子化の流れを受けて、経営状態は悪化。私が相談を受けたときには、すでにコンサルタントも何回か入っていながら、いずれも立て直しに失敗しているという状態でした。
SOLUTION サポートの流れ
●かつては効果的だった差別化が経営圧迫の要因に
高校受験を考える子どもや保護者にとって、今では選択肢は数多くあります。塾も集団指導塾や個別指導塾、難関校対策中心の塾、補修中心の塾、そのほかにも家庭教師や通信教育、またオンラインで学ぶこともできます。逆に受験産業にとっては、子どもの絶対数が減っていく中で、乏しいパイを大勢で奪い合うという非常に厳しい状況なのです。
C塾はこれまで厳しい入塾テストを課すことで差別化を行い、その地域で「××高校に行くならC塾」「勉強ができる子はC塾に行っている」という評判を確立していました。合格実績だけでなく、ほかの多くの塾が「学生バイト中心の講師」「教室は雑居ビルの一室を間借り」という状態であるのに対し、有資格者による専任講師制、ビル全体を確保した広く明るい教室など、ブランディングの面でもC塾は多くの保護者を引きつけてきたのです。
ところが少子化の進行するこの地域では、中学生の総数も年々減少していきます。かつては成功していたブランディングと差別化が、逆に経営を圧迫する要因となっていました。
●市場が縮小するなら転換してみよう
経営状態を改善するには、生徒数を増やさなければならない。けれども生徒数を増やせば「難関塾」というブランドに傷がつく。そこで私が考えたのは、そこに入れないレベルの生徒たちをフォローする受け皿を作る、ということでした。入塾テストで一定の点数を取れなかった生徒たちは、これまでは競合である個別指導塾に流れていました。そうではなく、彼らもまた「C塾個別指導教室」に吸収するのです。そうやって垣根を下げることによって市場を広げようと考えました。
私は他社の個別指導塾の運営状況を分析しつつ、経営者とともに個別指導塾と集団指導塾を連動させるシステムへの転換に着手しました。集団指導塾は従来通り、有資格者による質の高い授業を維持しつつ、個別は塾出身者を中心とした学生バイトを採用し経費の抑制に努めながらも、研修などによって指導の質を落とさないシステムを作り上げました。
また、ターゲットとなる子どもと保護者に対しては、入塾テストで一度弾かれてもC塾の個別指導を受けることができる、周囲からは「C塾へ行っているの、すごいね」と言ってもらえる、そして次の機会には再び集団指導の入塾テストを受けるチャンスが与えられる、集団に行かなくても「もう一つ上の学校が狙える」という「夢を形に変える」コースとしてオファーすることも決まりました。
●市場を広げることで従来のブランディングがより強力に
体制が整うとともに、保護者を対象とした学年ごとの無料説明会を各地区の教室で開催することにしました。例年行われている集団指導塾向けの入塾説明会の中でも個別塾を紹介しただけでなく、別途個別指導塾独自の説明会も、回数を重ねて行いました。
そのお知らせも新聞の折り込み広告やポスティング、学校近くでのビラまきなどを通して徹底的に行いました。また、説明会の参加者には、無料で体験授業が受けられるチケットも配布しました。こうやって「あのC塾が個別指導を行う」ということの周知徹底を図ったのです。
このとき、C塾が長年この地域で培ってきた「××高校へ行くならC塾」という評判が、地域の中堅校を目指している生徒の保護者にも、大きくプラスに働きました。これまでわが子の成績だと関係がないと思っていたC塾に行ける、C塾でもう一つ上の高校を狙わせてあげたい、という保護者層を取り込むことができたのです。その結果C塾の個別指導部は初年度から多数の生徒を獲得することになり、塾全体の経営を牽引することになりました。
個別と連動したスタイルは単に市場を広げただけでなく、最終的に「難関校ばかりでなく、中堅校にも強いC塾」というブランドを形成することに繋がったのです。